2009/09/06

目白のだんご

昔、昔、あるお城に殿様がいたそうな。
とても平和な時代で、隣の国と争うこともなく、人々は自由に国境をこえて、自由にモノを運んでいた。
殿様の仕事は、領地をまわり、国の人々の話を直接聞き、どうしたら住みよくなるかを考えることだった。

ある日、従者と二人で見回りをしているとき、町外れの広場に子供たちが集まっているのを見て、殿様が声をかけた。
『子供たち、集まって何をしているのか』
すると、子供たちは手にしているモノを差し出して
「泥だんご」と言った。
それは、子供の手のひらに丁度収まる大きさの、キラキラ輝く玉だった。
殿様は手に取ると、一目で心を奪われた。
「落としたら割れちゃうからね」
子供に言われ、殿様は大事そうに両手で顔に近付けた。
鏡のように自分の顔が写っている。
見れば見るほど、光り輝いている。そして、青や黄色、緑、桃、様々な色を有している。
『これは、何でできているのか教えてくれないか』
「泥だんごだから、土だよ」
『土? 土というのは、この地面の土か?』
「そう。殿様はだんご作ったことないの」
『君たちのように子供の頃は作ったが、こんなに光ってなかったぞ』
「そのだんごを磨くと光るんだよ」

城に帰ると、殿様は早速家臣にだんごを作らせ、手で磨かせた。
すると、わずかながら光ってきた。
そもそも、することがないので、家臣は夢中になった。
それを見ていた他の家臣たちも、だんごを作り磨き始めた。
自然と、誰のだんごが一番丸く、そして輝いているのか、競争になった。
家臣の一人で、小さなな子のいる者が、一番キレイなだんごを作った。
どうやらガラスのビンの口で磨いたそうだ。
どのだんごも丸く、輝いている。
しかし、輝きはあっても、色がない。
丸さ、輝きに差はあれど、色はどれも同じだ。
あの子供たちが持っていただんごは、たくさんの色がついていた。
磨き方がちがうのか?
早速殿様は、広場に向かい、子供たちをたずねた。
『この前見せてくれた色のついただんごは、どうやって作ったんだ』
「目白の陶芸教室で作ったんだよ」
『その陶芸教室とやらは、この国にもあるな。ならば、そこに尋ねてみよう』
家臣は、国元の陶芸教室を訪れたが、子供の泥だんごとは恥ずかしくて言えず、どんな土を使っているのか聞いてみた。
「信楽の土を使っています」
『それは、どこの陶芸教室でも同じか』
「おそらく同じです。一番成型しやすいですから」
『目白の陶芸教室でも同じか』
「確認してみましょうか?」
『殿様からの質問でな』
「確認が取れたら城に行きましょう」
陶芸の先生は、殿様がなぜ目白にこだわるのか疑問だったが、これまで悪政もなく、信頼もしていたので聞きもしなかった。
ただ単に殿様も陶芸するのかな、と考えたのである。
数日たち、同じ信楽の土だとわかり、殿様は土を取り寄せた。
家臣たちは、早速だんごを作り、磨いてみたが、変化はない。
だんごそのものに、色の違いはあれど、たくさんの色は出てこない。
殿様は何か秘密があるに違いないと思い、一番信頼している家臣を目白に向かわせた。
その一方で、陶芸の先生の元に、殿様自ら足を運び、陶芸の指導を受ける傍ら、陶器の産地について調べたのである。土に秘密があると、まだ思っているのである。
そもそも殿様は、あまりすることがないので、モノを作ることの楽しさに目覚めてしまった。同時にタイヘンさも知った。

萩や備前、常滑の土を手に入れ、だんごを作らせてみるが、あのようにはならない。
常滑の土は、抜きんでて赤いが、一色だけだ。

そのうち、家臣も殿様について器を作るようになった。
そもそも、そんなに仕事もないので、どんどんめり込んでいった。

しばらくして、目白に行かせた家臣が戻ってきた。
キレイに輝く、色とりどりのだんごを持っている。
道中、磨きなから戻ってきたのだ。
磨かれる前のだんごもたくさん持ってきた。
殿様は、早速磨かせた。
すると、青や緑、黄色に輝くだんごができあがった。
それを見た殿様は言った。
『だんごは目白に限る』

陶芸にのめりこんだ家臣たちは、その秘密が一目でわかったが、殿様には黙っていた。
面白くて、だんごどころではないのである。

その後、モノを作ることのタイヘンさを肌で知った殿様が、モノを作る人々と、それを支える全ての人を厚遇した。
その結果、この国は陶器の一大産地となったのをはじめ、様々なモノを作り出し、皆で競いあって、後々まで栄えたそうな。
めでたしめでたし。

目黒のサンマ祭は、今日だったような。
カラフルなだんごは、目白陶幻倶楽部で作れます。

は。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

パチパチ~~
mmmm~~~「目白の団子」
ふふふ~~
今日も若者達がぴかぴかに磨いて
彩鳥どり・・・・嬉しげでした~♪
nog.nog